Research Projects

現在、以下のテーマに取り組んでいます。

全てのテーマにおいて、共同研究者を随時募集しております。

1.探究を通した科学的思考力の育成

学習者の科学的思考力科学的推論能力(scientific reasoning skills)を育成することは、現代の科学教育の重要な目標の1つです。私は、科学的思考力の中でも特に、仮説設定能力や条件制御能力の指導と評価に関する研究を進めています。仮説設定場面では、「目の前の問題状況に対する暫定的な説明(仮説)」を構築する必要がありますが、その際、問題状況から従属変数と独立変数を見出し、因果関係について論理的に検討する必要があります。また、仮説を確かめるための実験方法を検討する場面では、操作変数以外の独立変数(統制変数)を適切に制御することが求められます。このような高度な科学的思考は初学者にとって難易度が高く、指導法の開発が課題となっています。指導法開発においては、科学的探究を通した科学的思考力の育成に取り組んでいます。


成果論文(抜粋)

2.STEM/STEAM 人材の育成

科学・技術をめぐる国際競争は激しさを増しており、STEM分野(Science, Technology, Engineering, Mathematics)の人材の需要は増加傾向にあります。しかしながら、労働市場では企業の需要に見合ったSTEM人材が不足しており、STEM人材の育成は科学教育の重要な課題の1つとなっています。また、STEMキャリアの志望者数には男女で大きな開きがあり、このようなジェンダーギャップの解消も重要な課題となっています。私はこれまで、国内外のSTEM/STEAM教育のレビューや、STEMキャリア選択に関わる要因の検討などを行ってきました。今後は、STEMキャリアの志望者数を増やすための介入研究などに取り組んでいく予定です。

成果論文(抜粋)

学会発表

記事

3.科学の性質を教える理科授業 

科学の性質(Nature of Science, NOS)とは、科学がどのように機能するのか、科学的知識はどのように生み出されるのかといった科学に関する認識論的な特徴を指します(McComas et al., 1998)。NOSの中身については、様々な下位要素が提案されていますが、例として「科学はその時点でのもっともらしい説明を構築する営みであり、将来的に変わる可能性がある暫定性を持つ」といった性質があります。NOSを理解することは、現代の科学教育の重要な目標の1つになっています。なぜなら、NOSを理解することで、科学の深い理解や、より良い意思決定などに貢献すると考えられているからです。

近年はNOS理解の重要性が認められるようになり、多くの国のカリキュラムに含まれるようになってきています。また、PISA調査のような国際調査でも、その理解度が調べられるようになってきています。その結果、日本は国際平均と比べてNOSの理解度が低いことが明らかになっています。このような状況の改善に向けて、NOSの指導と評価に関する研究を進めています。

成果論文

学会発表

Blog記事

4.生成AIを活用した理科教育

学習者が生成AIに触れる機会が拡大しつつある現在、教育における適切な活用法を検討することは喫緊の課題です。生成AIが人間の仕事を奪うのではないかといった脅威論がある一方で、私たちの生活を豊かにしてくれるという期待もあります。教育においては、学校の業務改善のみならず、授業の質の向上に貢献する可能性があります。生成AIをどのように活用することが理科という教科の目標の達成につながるかを現場の先生方と連携しながら研究しています。

成果発表

書籍

メディア報道

5.現代的な教育測定法の開発

ある教育介入が効果的であったかどうかを検証する際には、客観的な方法で教育効果を測定する必要があります。その際に用いられる測定方法は、妥当性や信頼性の確かめられた統計的に優れた性質を持つものであることが望ましいです。近年では、大規模な教育調査が世界中で実施されており、質の高い教育測定法の開発が求められています。私はこれまで、現代的なテスト理論である項目反応理論(Item Response Theory, IRT)に基づき、様々な教育測定法の開発に取り組んできました。

今後は、学校に配備されたタブレット端末上で実施できるテスト(CBT)を開発し、教師と学習者が学習状況を効率的に把握し、個別最適化された学びを実現できるよう、研究を重ねていきたいと考えております。その際、多母集団IRTモデル、認知診断モデル(Cognitive Diagnostic Model, CDM)、機械学習深層学習といったより発展的なモデルの導入を検討しております。

プロジェクトHP

成果論文


学会発表


開発したアプリケーション

6.教育効果に関するメタ分析

教育分野の研究はサンプルサイズの制約から、1つの研究だけでは一般化可能な強いエビデンスを生み出しにくいという課題を抱えています。そこで、メタ分析(meta-analysis)という手法を用いて、特定のテーマに関する先行研究を量的に統合することで、より強固なエビデンスを生み出す方法が提案されています。私たちはこれまでに、理数教育におけるテクノロジー活用の効果、理科教育における様々な指導法の効果に関するメタ分析を実施してきました。メタ分析の結果は、これまでの研究を総括するだけでなく、これからの研究や教育政策を検討する上で有用だと考えられます。

プロジェクトHP

成果論文

7.研究の再現性とオープンサイエンス

近年、教育学を含む多くの学問分野において過去の研究結果が再現されないという再現性の危機が問題になっています。このような再現性の危機の原因として指摘されているのが、問題のある研究実践(QRPs)の存在です。QRPsを防止するには、個々の研究者の努力に加えて、学術制度を改革しオープンサイエンスを推進していく必要があります。研究の透明性を高め、質を向上させるための取り組みについて他分野の研究者と連携しながら検討を進めています。

成果論文

学会発表